その日は好天に恵まれ、絶好のサッカー日和でした。我がサッカーチームはいつものようにだらしなく、
ぽかーん とした表情で14人が集まりました。社会人サッカーは選手交代についてはかなり寛容なルールで、
交代は何人でもオッケー、1度交代した選手でも再度交代できる、となっております。チームの暗黙のルールで、
来た人は全員10分は試合に出る となっていますので、みんな出場します。
試合開始30分前にだらだらとウォーミングアップをはじめます。たいして体も動かしていないのに、ある選手が
「あかん、足つった。調子悪いわ~」と言いながら、風上でエアーサロンパスを使用しました。
すると、試合開始10分前だというのに、風下でおにぎりを食べていた選手が大声で怒鳴りました。
「おにぎり、どうしてくれるねん!!」 今思うと、このとき、すでにチーム崩壊の足音が聞こえていたのかも
しれませんが、みんなぽかーんとしているので、危機感はありません。
さて、試合開始の笛が高らかにならされました。我がチームのキックオフです。 するとどうでしょう、
すごくパスが回るのです!! 前半はまだみんな元気ですし、足も動きます。 普段なら、開始直後から
防戦一方で、ぼこぼこにされて、7対0とか 8対0 というスコアが多いです。なのになのに!!
今日はいつもと違う!! 味方のパスがつながるつながる!! シュートまでいく という奇跡も起きました!!
キャプテンが「俺たちは、強い」 といいました。 楽しいサッカーで、みんなにこにこしています。
今日は、勝てるかも! と思ってしまったことが、いけなかったのかもしれません。
前半は0-0で終了しました。 我がチームがよく攻めて、ずっとボールを、いや、試合を支配していました。
ハーフタイム、「あそこのパス、もうちょっとゆるかったらおいついてたのに!」 とか、
「相手も疲れてるから、後半仕留めようぜ!!」 とか、「あのシュート おしかったなー」
とか、にこにこ顔で わいわい話していると、前半試合にでていなかった3人が、神妙な面持ちで、こういいました。
「相手、8人やで。」
この時の衝撃を、僕は忘れません。「相手、8人やで。」「相手、8人やで。」「相手、8人やで。」
何度も頭の中でリフレインされます。 今年の流行語大賞です。 そうです、相手が8人であると気づいたのは、
ハーフタイムの時でした。 いっきにチームに緊張が走りました。 顔面蒼白です。
その情報は、できれば聞きたくなかった。もともとやる気スイッチなどないチームなのに、変なスイッチが
はいってしまいました。何のスイッチかわからないけど、何かのスイッチがはいってしまったのです!!
緊張の後半へ続く。