「40以上の年齢で夜中の1時半にラーメンが食べたくなったら、どうするのが正解だかわかるかい?」
「我慢する、ってのは正解じゃあない。」
「正解は、ライスも一緒に頼んでラーメンライスでかきこむ。
明確にこれが正解なんだ。
これ以外に解はないんだよ。」
そう言って彼は運ばれてきたラーメンとライスをきれいに並べて満足げに小さく笑った。
「これ以外に解はない。
数学の証明問題みたいなものだよ。
40歳以上で真夜中にラーメンが食べたくなった場合、ラーメンとライスも頼むのが唯一の解であることを証明せよ。
ほらね。
証明問題だよ。」
そう言って彼はこってりラーメンとライスをほおばった。
食べ終わって店を出ると、彼は得意そうにこう言った。
「そのうち、年齢を重ねていくとね、真夜中の1時半にラーメンが食べたい って思う回数は絶対に少なくなって、やがて、もう真夜中にラーメンを食べたいと思うこともなくなると思うんだ。
あるいは真夜中にラーメンを食べたい と思うことはなくならないかもしれないが、物理的に食べることができなくなっていくと思うんだ。
たとえば健康。たとえば移動手段。たとえば深夜の外出のハードル。
いろんな理由で、食べたくても食べれないって状況になっていくと思うんだ。」
「だからね、オレは、
もし真夜中にラーメンが食べたくなって、外出できるなら、、迷わずにラーメンライスを食べる。
そのうち食べたいと思わなくなるか、食べたくても食べることができないようになるから。」
頭上には12月のオリオン座がきれいに輝いていた。
「さっきはね、
真夜中にラーメンライスを食べるのは、これが最後かもしれない。
そう思いながら食べたんだ。
格別においしかったよ。」
真夜中の空気は冷たく肌寒かったが、、体の芯は暖かく、頭はハッキリと冴えていた。