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甘かったです。

サクサクして、

すごく甘かったです。

小麦粉と砂糖とチョコレート。

全部甘かったです。

甘ったるく感じるくらいに、

すっごく甘かったです。

甘ったるくて、しかも、

スゲー甘かったです。

 

全身、隅々まで、砂糖が行き渡りました。

 

 

◎満月の夜に。

小樽の海浜公園駐車場にて。

 

「今日で最後だから。

明日には、離ればなれになって、もう会えないから。

だから、、、

 

好きにしていいわよ。」

 

薄暗い車の助手席で、直子さんはそう言ってほほ笑んだ。

その微笑みは、どこか寂しそうで、迷いや困惑が幾分含まれていた。

 

 

数時間前、ぼくたちは札幌でレンタカーを借り、船の出る小樽を目指した。

 

助手席に直子さんを乗せての夜のドライブは、ぼくをどうしようもなく興奮させた。

綺麗な、それはそれは綺麗な満月の夜で、たわいもない会話を楽しみ、北海道最後の夜をかみしめるように過ごしていた。

ふとした瞬間に会話が途切れ沈黙が続く。

彼女は沈黙が嫌いで、すぐに何か話してとはにかんだ笑顔を見せる。

ぼくは会話の引き出しをあけ、何かふさわしい会話の糸口を探してみる。

だけどその時は、会話の糸口を見つけだすよりも前に 助手席に座る直子さんの手をとりギュっと握りしめていた。

沈黙の中、少しして直子さんもぼくの手を握り返してくれた。

「綺麗な満月。月光浴で体を浄化しなくちゃね。」と、彼女はいった。

 

海浜公園の駐車場に車を停めて 満月の妖艶な光を体に浴びながら ぼくたちは海岸を二人で歩いた。

直子さんは「月光浴月光浴〜♫」と、上機嫌でぼくの少し前を満月を眺めながらゆっくりと歩く。

ぼくは直子さんの綺麗な後ろ姿と綺麗な満月を交互に眺めた。

どちらも同じくらい美しく、どちらも同じくらい遠く、はかなく、ものすごく離れた場所にあるもののように感じられた。

本当はどちらも手を伸ばせば届く距離であるのかもしれないし、どちらか片方は、永遠をもってしてもたどり着けないほどに離れているのかもしれない。

 

ぼくは軽く目を閉じて手を伸ばし、直子さんに触れ、抱き寄せた。

 

もし、満月を抱きしめることができるのなら、きっとこんな感じなのかな、と思った。

目を開けると直子さんが満月に変わっているかもしれないな、と思った。

 

ゆっくりと目を開けると、満月ではなく直子さんが腕の中でぼくを見つめていた。その瞳は濡れた満月の輝きだった。

 

 

 

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