昔々 あるところに ハンドパレットの鬼がいました。

「今日も暑いですねー 夕方に またゲリラ豪雨がきそうですねー」

地方のちょっと大きめの工場の休憩所は、出入り業者にも解放されており 私は休憩所で従業員さんと会話するのが好きでした。

私はしがないエアコン屋。

下請け業者として毎年夏にはかなりの頻度でこの工場に出入りしていました。

しばらく休憩していると、私より 少し年長くらいの 無口でまじめ一徹のようなかんじの小柄な従業員さんが休憩所にはいってきました。

真っ黒に日焼けし、半袖の作業着からのぞく二の腕は太く、胸板は厚い。

無口で、おとなしい雰囲気。

その方はおもむろに水筒から麦茶を注ぎ いっきに飲み干す。

「キンキンに冷えてやがるぜ」

とは言いませんでしたが、、その表情は ひと仕事を終えた 充実感がみなぎっていました。

この方こそが  ハンドパレットの鬼。

柔和な 優しい 小さな笑顔。

無口。

休憩所にはいる その途中に。 おそらくは新入社員さん10名ほどがハンドパレットの操作を練習していました。

ハンドパレットとは、、

Screenshot

↑これのことです。

その操作の練習には、若い女性も参加されていました。

おそらくは、工場勤務の基本のスキル。

ハンドパレットの操作。

A地点のものをB地点に運ぶ。

ハンドパレットの鬼は 来る日も来る日も ハンドパレットで物を運んでいました。 フォークリフトに混じって。

来る日も来る日も ハンドパレットで物を運んでいました。

フォークリフトに抜かされながら。

毎日毎日 ハンドパレットでものを運んでいました。

そろそろ休憩所から出ようかというときに、雨が降り出しました。 

ハンドパレットの鬼は、、おもむろにカッパを取り出して 素早くカッパを着込みました。

夏。

夕方の豪雨。

やむ気配はない。

ハンドパレットの鬼は、この豪雨の中 ひとりカッパを着用して ハンドパレットでものを運びはじめました。

ハンドパレットの鬼から

ハンドパレットの鬼神に 生まれ変わった瞬間です。

まさに、ハンドパレットの鬼神です。

今はもう、ハンドパレットの鬼神を見ることはありません。

どこにいるのだろう。

どこかで ハンドパレットでものをはこんでいるのだろうか。

ハンドパレットの鬼神がものを運んだ 鬼神の道には、

いまは自動運搬車が通っています。

安全確保のため その自動運転の運搬車は動くとサザエさんの挿入音楽が爆音で流れます。

磯野家の団欒 で YouTubeで聴くことができます。

その昔 カッパを装着した鬼神(最終形態)が通った鬼神ロードは。

現在 地面にチップが埋め込まれ、自動搬送機が磯野家の団欒を爆音で流しながら ものをはこんでいる。

諸行無常の響きあり。

時代の激流に飲み込まれた ハンドパレットの鬼。

いやさ 鬼神。

充実感ただよう小さな笑顔。

時代の流れ。

そのうちスマホだって、過去の遺物になるにちがいない。

ハンドパレットからフォークリフトに移り変われずに、ずっとハンドパレットの鬼。

そのフォークリフトが自動搬送機にとってかわる。。

磯野家の団欒を爆音で聞かされながら。

鬼神をおもう。

夏の午後。

麦茶を飲んで、がんばろうと思う。

この物語は フィクションです。登場人物などはすべて架空のものです。